ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

「……羽柴(はしば)!」

マイクのスイッチが切られると同時に私は放送室から出た。そしてスタスタと廊下を歩いていると後ろから詩月が追いかけてきた。


「さっきの続き。俺の名前を知ってるかってこと」

相談に乗っている詩月は友達でも同級生でも上級生でも丁寧な話し方をしているのに、マイクから離れるとその口調はいつもどおり。

自分の昼休みが15分も無駄になったこと。そして親しいわけでもないのに隣に並ばれて馴れ馴れしく話しかけてくるその姿に私は少し不機嫌だった。


そもそも今日は朝から運がなかった。

目覚ましに設定していたアラームは鳴らないし、下り電車と上り電車の遮断機に足止めされるし。その上、学校に着いたら靴箱がなぜか壊されていた。

挙げ句の果てには各教室に置かれている投稿ボックスを放送室に届けるように頼まれてしまい……。

中身だけを別の箱にカラカラと移していたら『もう放送時間だから外に出ないで』と詩月に謎の命令をされて、あの15分間に至る。

本当に本当に運がない。
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