ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

私はふと、力に目覚めた時のことを思い出していた。

あの時の両親の喧嘩はいつも以上に激しくて、その怒鳴り合う声を聞いた近所の人がうちを訪ねてきた。

さっきまで鬼の形相だったふたりが『ちょっと些細なことで言い争ってしまって。ご心配おかけしてすいません』なんて、気持ちの悪い笑顔で応対していた時のこと。

たしかあれはこのテーブル。そう、今私がご飯を食べているテーブルの上に置かれていた〝離婚届〟に触れた時のことだった。


喧嘩は絶えなかったけど、まさか離婚をするなんて思ってなくて。

しかも離婚届にはもうしっかり判子まで押されていて、あとは提出するだけの状態で。私はなんの説明もされていないし、なにが原因で、どうしてこうなったのか分からないまま傍観者として存在しているだけ。


ふたりの離婚は私には関係のないことなの?

大人の事情だから説明する必要がないって?

聞くことすら許されない雰囲気と無言で突き放されている現実にどうしようもなく腹が立って。
こんな離婚届なんか破いてしまおうと手に取った瞬間。

今まで経験したことのない電流のような衝撃が身体中に走った。
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