ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
詩月の返事はただひとつ。
だって聞かれなかったからだって。
……はあ。頼んできたのはそっちなのに本気で探す気があるのかな。なんだか私だけやる気満々みたいに見えない?
ちょっと興味があるから協力してるけど正直、私のこの力で詩月の記憶を見つけるなんて不可能だと思う。
だって詩月自身に記憶がないのだから、どこに行ったとか、なにを触ったとか、どんなものが大切だったとか、そういう情報は一切ないわけで。
それを一番に証明してくれる詩月の両親はすでに他界。
最後の綱は認知症になってしまったおばあちゃん。
直接聞くのはムリでも指先から思念を読み取ることはできると思う。だけどそれをしに行こうとは言わなかった。
おばあちゃんが詩月に隠してることを私が簡単に読み取っていいのかってことと、詩月の記憶に関わる恐怖心。
これは今まで友達に頼まれた恋の相談や落とし物探しなんて簡単な話じゃなくて。
だれか人生を変えてしまうようなことかもしれないから。
だからあまり深い場所に足を踏み入れないようにしようと私は決めている。
でも詩月がカメレオンのままじゃあまりに気の毒だから手伝うだけ。最初に宣言したとおり、少しだけ手伝ったら終わりにしよう。