ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


結局そのあと目的地の中学校に到着したけど、
もちろん中には入れないし詩月の記憶と結び付きそうなものはなにひとつ得られなかった。


「悪いな。せっかく付き合ってもらったのに」

街をぐるぐる回ったけど詩月の記憶に響くものはなくて、もちろん私の力だってこれじゃどこに触れて思念を読み取ったらいいのか分からない。

私に気を遣っているのか、期待が大きすぎたのか詩月はすごく落ちこんでいて「じゃあ、せっかく来たんだし海でも見て帰ろうよ」と誘ったのは私。


海なんて小さい時にしか来たことがないから、
このサラサラとした砂浜と波の音が新鮮だ。

私たちは海から少し離れた場所に座ることにした。目の前ではカラフルなパラソルを立てた水着の人たちが楽しそうにしてて、さすがにあの場には馴染めないから離れてるこの場所が丁度いい。


「風が冷たくて気持ちいいな」

さっきまで落ちこんでたくせに詩月の機嫌は戻っていた。

詩月の遠い視線を見ながら、潮風が私たちの髪の毛を簡単にさらっていく。思えば誰かとこうして肩を並べて座るなんて久しぶりだ。

男子と出掛けたのも初めてだったし、休日はひとりで過ごすことが当たり前だったから。
< 41 / 152 >

この作品をシェア

pagetop