ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「はは、なにその雑巾」
詩月の第一声はそれ。
詩月に言われたから放送室に来たんじゃなくて、ひとりで窓拭きやってるのがバカらしく思えたから。
あのまませっせと働いてたらその内「こっちの掃き掃除もしてー」なんて女子に言われそうだったから逃げてきただけ。
雑巾を持ってきちゃったのは……成り行きというか置いてくるのを忘れただけだ。
「先生探してたよ。けっこうマジな顔してた」
「あとで適当な言い訳しとくからいいよ」
脅すつもりで言ったのに詩月は余裕な表情。どうせ詩月は先生にも好かれてるから怒られることはないって分かってるけど。
「まあ、とりあえず座りなよ。莉津」
詩月が椅子を指さした。
「雑巾投げるよ」
「わ、嘘嘘。冗談。羽柴さんどうぞ」
週末に東和田市に行って、私たちの距離は前より近くなった……気がする。あの街に行けたことを詩月は繰り返し感謝してたし、また行く約束もした。
詩月はとても私を信用してる。
私しか頼れないってことも大きいけど、詩月にとって私は愛想を振り撒かなくてもいい人間だから一緒にいてラクなんだと思う。