ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
震える右手を胸に当てて、そのまま逃げるように教室へ。そして自分の席に座ると心を落ち着かせるために窓の外を見た。
……ああ、本当にイヤ。
まだ胸がざわざわとしてるし、指先がひんやりと冷たい。
「ねえ羽柴さん。英語のノートまだ出してないよね?」
気配を感じて振り向くと、そこにはクラスメイトの女子が立っていた。その手には提出する他の人たちのノートを抱えていて〝早く〟という無言の圧力。
「………」
私は机からノートを取り出すとそれを静かに差し出した。その子は去り際に冷めた視線を私に送りつつ、すぐに友達の元へ。
「普通さ、ごめんとか言うよね。羽柴さんって変わってるっていうか……なんであんなに絡みにくいんだろう」
他の女子たちも「ねー」と同意するように頷いていて。その声は私に丸聞こえ。
べつに平気だ。痛くも痒くもない。
教室でいつもひとりでいて友達もいない私はみんなから見ればかなり浮いた存在なんだろう。
正直、自分の望んだとおりの結果になってホッとしている。
〝不気味で頭のおかしいヤツ〟と言われた過去。
それに比べたら変わった子という表現なんて、
可愛らしいとさえ思えてしまう。
そのあとも私の批判的な声は止まらなくて、聞こえないふりをするのもけっこう疲れる。と、その時。
「英語のノート集めてるんでしょ?はい、俺のぶん」
女子たちの会話を遮るように割り込んだのは詩月だった。