ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
詩月の通っていた中学校が分かれば簡単に記憶と結びつくものが見つかると思ったのに、そう甘くはないらしい。
校内に忍び込んで無理やり詩月の記憶をこじ開ける?それとも手当たり次第に私が右手で触れて2年前の詩月を見つけ出す?
……どれも無謀だなあ。
「少しぐらい俺が思い出せればいいんだけど
……ごめん」
険しい顔をしすぎたのか詩月に謝られてしまった。
ずっと疑問に感じていたことはいくつかある。
その中で一番の疑問はなんで詩月は記憶喪失になったのかってこと。
頭を強く打ったり事故に遭ったわけじゃないと本人は言ってたけど……普通に日常生活を送っていたら記憶がなくなるなんてことまずあり得ない。
事故や自然に起きたことじゃないのなら、まさか自発的に?自ら記憶を消したい出来事があったってこと?
「………」
いや、考えすぎか。
元々ポジティブな性格じゃないからすぐにマイナスなことばかり浮かんでしまう。
「ちょっと休憩する?こんな炎天下にずっといたら私も詩月も熱中症になっちゃう……」
額に滲んできた汗を拭ってペットボトルの水を飲もうとした時。
「世那……?」
私たちの背後から声が聞こえた。