ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
そこにいたのは淡いブルーのTシャツにショートパンツを履いた女の子。とても手足が長くて羨ましいぐらいスタイルがいい。
「世那……なの?」
女の子は絞り出すように再び問いかけた。そして一歩また一歩とゆっくり詩月に近づいて確認するように顔を見つめる。
「な、なんか雰囲気変わったね!一瞬人違いかと思っちゃった。今どこに住んでるの?元気なの?ちゃんと高校には……」
「えっと……」
突然投げ掛けられた質問の数に詩月が困った顔をした。詩月が助けを求めるように私を見るから仕方なくその間に入る。
「……詩月と知り合いの人ですか?」
記憶喪失なんです、なんて軽々しく言えないし、一応確認のため。
「だれ?」
女の子は私を見るなり露骨に顔を曇らせた。だれと聞かれても……普通に困る。
女の子は詩月の顔をもう一度よく見て、その手をぎゅっと握った。
「世那忘れちゃったの?私だよ。安田梓!中学2年の時同じクラスで、よく一緒に遊んでたじゃん!」
「やすだ……あずさ?」
それでも詩月の記憶はやっぱり戻らない。