ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


そのあと私たちは近くの公園へと移動した。新緑に囲まれている屋根付きのベンチに座って息苦しいほどの沈黙。

「俺……昔の記憶が曖昧で。だからきみのこともよく覚えてないんだけど俺たちは友達だったの?」

そんな中、口を開いたのは詩月だった。

「友達っていうか……私が一方的に付きまとってたっていうか……」

「え?」

「いや、それは別にいいんだけど!……記憶が曖昧って……いつ頃の?」

「2年前までのことがほとんどというか全部……」

また長い沈黙。安田梓という女の子が詩月と同級生だったのは本当みたいだ。親しかったかどうかは分からないけど、確実に大きな進展ではある。


「俺ってどんなヤツだった?どんな性格をしてどんな生活をしてたのか知ってる範囲でいいから教えてください!」

詩月が安田さんの目を見て頭を下げた。


「ちょ、ちょっと嫌だ……世那がそんな敬語で頭を下げるなんて……」

自分の中にいる詩月世那と目の前にいる詩月世那があまりに違いすぎて、とても困惑していた。安田さんが言いづらそうにチラッと私を見る。


「えっと、私向こうに行ってるから」

「え?羽柴?」

詩月の呼び止める声を無視して私はベンチから遠ざかった。       
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