ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
どうやら安田さんと知り合いらしい。
「こんなところでなにしてんの?梓が駅前にいるなんて珍しいじゃん!」と女の子は行き交う車を確認して、こっちに渡ってこようとしていた。
「ま、待って!私が行くから……!」
何故か安田さんは慌てた様子でそれを止めて、私たちに「先に駅に向かってて」と指をさした。
詩月は呑気に「分かった」なんて言って歩きはじめたけど、違和感だらけなのは私だけ?
あの慌て方は不自然というか……顔色を読むのが得意じゃない私でも分かるぐらい〝ヤバい〟って顔をしてた。
モヤモヤと疑問が残る中でも詩月はお構い無しに駅に向かうから、私もそのあとを追うしかなかった。
「やっぱり俺羽柴が見えたとおり、けっこう悪いこともしてたらしいよ」
そうポツリと詩月が言う。
「他校の不良仲間と毎日遊んで周りからは怖がられてたって。それで俺は中学2年の夏にこの街から引っ越してそれからは音信不通」
「………」
「安田とは1年ぐらいの友達関係だったらしいけど、俺が住んでた場所も両親のことも知らないってさ」
そして改札口の前に着いて詩月は気持ちを誤魔化すように電車が来る時間を調べに行った。
……つまり詩月が知りたかったことはなにも得られなかったってこと?安田さんは相当詩月に気があるように見えたし、もっと核心的なことを知ってると思ったのに。
そんなことを考えながら私は壁に寄りかかって、さっき食べた飴をコロコロと口の中で転がす。