ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

「――1番線に上り電車がまいります」

ホームに流れるアナウンス。それと同時に私たちが乗る電車が風をきって走ってきた。車体はゆっくりと停車してプシューッとドアが開く。

「すっかり夕方になっちゃったな。帰りどっかで飯でも……」

詩月が車内に乗り込んでくるりと振り返った。
その目は一瞬で固まって開いたドアが静かに閉まっていく。


「ごめん詩月。なんかさっきの公園にスマホ忘れたみたいだから先に帰ってて」

私の足はまだホームに立ったまま。

「は、お、おい……っ!」

ガタッと詩月が反応したけれど、すでにドアは閉まっていて電車も動き出す。

窓に張り付くように詩月が私を見ていたけど、私は軽く手を振って電車を見送った。

ひとりになって再び改札口を通り抜けて、ふわりとまた潮の香り。目と目が合って〝安田さん〟はぺこりと頭を下げた。


――『お願いがあるんだけど……世那には内緒で、ふたりきりで話せませんか?』
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