ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


私たちはまた来た道を戻って公園へと向かった。見晴らしがいいせいかオレンジ色の夕焼けが色濃くて、それが海の水面に反射してキラキラとしている。

「話って……?」

先に切り出したのは私のほう。てっきり嫌われてると思ってたから、ふたりきりでこうしているのが信じられないくらい。

「引き止めてごめんなさい。どうしても話したいことがあって……」

安田さんの口調が少し弱々しい。


「その前に確認だけど、世那は本当に本当に記憶がないの?」

「うん」

「2年前から?中学2年までの記憶が?」

「そうみたい」

言葉少なめに返事をして、安田さんはなにかを考えるように無言になった。私はそれを急かしたりしない。

「……世那はあなたに手伝ってもらって一緒に記憶を探してるって言ってたけど、それも本当?」

「うん、本当」

これが恋愛絡みの質問じゃないことは、あの私の服を掴んできた時から察していた。

ひとつひとつ頭を整理して確認して。それがまとまったところで安田さんが声を張る。


「だとしたらお願い。記憶探しを今すぐやめて」

「……え?」

それは想像していなかった言葉だった。
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