ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
この空気感とは真逆に夕焼けが頬に当たって暑いぐらい。安田さんは続けるように私の目を強く見つめた。
「世那は二度とこの街に来ちゃダメ。
ううん。絶対に来させないで……!」
詩月には言えなかったこと。また胸の奥がモヤモヤとして嫌な感じ。
「なにか知ってるの?」
どうして詩月の記憶がなくなったのか。
失った空白の時間になにがあったのか。
詩月が知りたい本当の自分。
すると安田さんはため息をつきながら、周りを囲うようにある柵に手をかけた。
「……なにも知らないよ。ただあの頃の私は家に帰りたくない事情があって、世那とその仲間たちと夜遊びばかりしてた。そんな中で密かに世那に片思いをしながら積極的にアピールしてたけど見向きもされなくて……。思えば世那はあの頃から他の人とはなにかが違った」
「……違う?」
「うん。だけど世那は自分のことを話さない人だったから詳しいことは知らない。分かるのは家族のことで悩んでいて、ずっと友達の家を転々としながら生活してたってことだけ」
「………」
「ただふたりきりになった時があって、その時に世那はぽつりとあの家をめちゃくちゃにしてやりたいって言ってた」
「詩月の家は……」
「今はないよ。取り壊されて空き地になってる」
少しずつ明らかになっていく詩月の過去。だけどやっぱり腑に落ちないことばかり。