ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
安田さんは本当になにも知らないのか。それとも知っているけど言えないのか。
とてもズルいことが頭に浮かんだ。だけどその前に少しだけ試してみる。
「詩月は今の自分が嫌だって。昔の友達も分からないって。詩月の仲が良かった人とか遊んでた人とか、できればそういう人たちと会わせてあげたいんだけど……」
「……あーえっと。世那は友達が多いほうじゃなかったし不良仲間たちとも上辺だけの関係だったから……会ってもあんまり意味がない気がする」
その口調はとても不自然なくらい、たどたどしかった。
だからほら、またズルいことを考えている。
「そっか。色々と話してくれてありがとう。安心して。詩月に話した内容は喋らないから」
まるで私もカメレオンになったかのようにニコリと笑みを見せた。すると安田さんはホッとしたように肩を落とす。
「最初から失礼な態度をしてごめんなさい。世那に対しての気持ちはとっくに整理したはずなのに久しぶりに会えて嬉しかったからつい……」
「ううん。平気。またどこかで会えたらいいね」
私はそう言ってわざと握手を求めた。
自然な流れ。絶対にバレずに触れる方法。私はいつからこんなにズル賢くなったんだろうか。
安田さんはなんの疑いもなしに手を差し出して、その右手と右手が重なり合った。