ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
詩月……さん家?
聞き間違いじゃなければ、確かにそう言っていた。
『せ、世那……。ここ世那の家なの?』
恐る恐る、そう尋ねた。
返事は返ってこない。いつもそうだ。いつもきみは他の人とはなにかが違って、たまにすごく遠い瞳をしている。
〝あの家をめちゃくちゃにしてやりたい〟
少しだけ見えたきみの本音。
不謹慎だけど、嬉しかった。きみに近づけた気がして。心を許してくれた気がして。
ああ、なんて私はバカなんだろう。
きみのことをなんでも知りたくて追いかけて。
その遠い瞳をする理由も、いつか知りたいと思ってた。
バチバチと燃える家。屋根が崩れ落ちて、庭先に咲いていた白い花が黒く散っていく。
私は見た。
見てしまった。知ってしまった。
きみの口角がわずかに上がったところを。燃え盛る自分の家を見つめるその横顔が何故かひどく安心したような表情に見えて。
その頭に浮かんだ真実を探らない代わりに、この時のきみの姿は絶対に誰にも言わないと心に決めた。