ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
結局私はノートを買わずに家に帰った。買う気分になれなかったことと、街をうろうろしている父親と鉢合わせになることが怖かったから。
静かに玄関のドアを開けて靴を脱ぎ捨てる。心を落ち着かせようとリビングに向かって水を1杯だけ飲んだ。
するとバタバタと足音が聞こえて、閉めたはずのリビングのドアが再び開いた。
『うん。今家に着いた。まだ仕事の予定がはっきりしないんだけど次会えるのは……』
左手に買い物袋を持って右手でスマホを耳に当てる。そんな母と目が合って母は慌ててスマホを離した。
「お、おかえり」
「………」
私の前だと都合がわるい電話なのに、いつも危機感がないというか注意が足りない。
まだ〝相手〟と繋がっているスマホを私は睨みつけて、自分の部屋へと階段をかけ上がった。
「……っ!」
そのままクッションを床に投げつけて、怒りと不満で頭がどうにかなりそうだ。
知りたくないことに限って次々と目にしてしまう最悪な悪循環。
あんな汚い大人にはならない。嘘だらけで真っ黒な人間にだけはなりたくない、なんて虚勢を張って。じゃあ自分がキレイなのかと聞かれたらそうじゃない。
私だってもし誰かに感情を見られてしまったら、それはドロドロして黒くて醜さの塊だらけだと思う。