ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

なんだかとても長い夢を見ていた気がする。みんな顔に不気味なお面を付けていて、ずっと私を追いかけてくるそんな夢。

――『じゃ、俺の探しものが終わったら羽柴の探しものを見つけようぜ』

何故だかふと、詩月の声が聞こえた気がした。


目が覚めると私はベッドの上にいて、この消毒液の匂いはきっと保健室。周りを囲うように閉まっていたカーテンがガラッと開いて、そこから詩月が顔を出した。

「大丈夫か?」

まだ状況が理解できなくて頭がぼーっとしている。

「貧血だって。ちゃんと飯食ってんの?」

なんで詩月がそんな不安そうな顔をするんだろう。後頭部がすごくズキズキとして思わず顔を渋くした。

「あー少し頭打ったみたいだから。ほら、ここにたんこぶ」

詩月はそう言って私の頭に触れた。その手は大きくて、まるで壊れ物に触るように優しく撫でる。


「……詩月はさ、今のままのほうがキレイだよ」

自然とそんな言葉を口にしていた。

頭を打ったせいだろうか。色々なことを思い出して、嫌なことも苦しいこともダムのように心に溜まっている。
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