ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
触れるもの、見るもの、すべてが鬱屈としていて。その中できみだけが……詩月だけが私に汚いものを見せない存在だった。
それなのに詩月の過去に近づくたびにその真っ白な心に色が付いていく。
せっかく唯一の存在だったのに、詩月は〝あっち側〟に行ってしまうの?
「積極的に協力してくれるんじゃなかったの?」
詩月の言葉にハッと我に返って、感傷的な自分を打ち消した。
「……私だって不安定になる時ぐらいあるし」
ふいっと顔を背けて、いつものように可愛くない言い方をしてしまった。
「うん。俺も。だからちゃんとするために今は逃げちゃダメな気がする」
「………」
詩月は本当にカメレオンだね。いつもそんな風に分かりやすい表情をしてくれたらいいのに。
「おい、まだ寝てろって!」
「平気だよ」
詩月に制止されながら私はゆっくりと体を起こした。ベッドの隣にある棚に手を付いて、その瞬間ビリビリとあの感覚が。
――『ねえ、人が来たらどうするの?』
誰もいない保健室。静まり返った空間で聞こえる息づかい。
『大丈夫だよ。授業中だし先生も出張でいないし』
『でも……』
『来てもいいじゃん。こうして布団被って寝たふりすれば』
『わ、ちょ、ちょっと!もう……』
そこでプツリと切れた思念。私の右手の下には制服のリボン。どうやら棚に置きっぱなしにされていたようだ。