ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

ぼーっとしていた頭が一気に目覚めるほど不意討ちを食らってしまった。

たしかあれはバスケ部の人気がある先輩と生徒会役員の真面目な女子生徒だ。そのふたりがこのベッドでイチャついていて……本当に目覚めが悪い。

……私もちょっと気を抜きすぎかな。もっと気をつけないとこうして見たくもないことが……。


「え、バスケ部の小澤先輩と5組の飯田さんって付き合ってんの?」

保健室に響く声。どう見てもここには私と詩月しかいないというか……今のは確実に詩月が言った。

お互いに目を丸くさせて数秒。

「えっと……私いま口に出して言ってた?」

「ううん。言ってない」

「じゃあ、なんで……」

目線を下に落とすと〝あること〟に気づいた。

リボンに触れている私の右手。そして左手は……
詩月が握りしめていた。繋がってるままの左手を凝視して目線を詩月に戻す。


「なんで……」

「いや、羽柴が起き上がろうとするからつい手を」

「じゃなくて!……まさか見えたの?」

そんなことあり得るわけがないと思いながらも、あの光景を詩月が知る方法はひとつしかないのだ。


「うん。なんか……よく分からないけど見えちゃった」

「………」

つまり私が右手で思念を読んでいる間、誰かが私の左手に触れていれば思念がその人にも見えるってこと?

試したことはなかったけど……まさかそんな法則があったなんて知らなかった。
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