ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
そして学校帰り。家に帰ってもとくにやることはないし、猫で癒されたい気分だったから詩月の家に行くことにした。
青々としていた庭の木がいつの間にか紅色に染まりはじめていて。詩月の家に行くのはこれで2回目だけど本当に圧倒されてしまうほど立派な家。
「ほら、やっぱりいたよ」
また落ち着かない客室に案内されて詩月がおはぎを抱えて連れてきた。「ニャアア」と可愛らしい声を出して、相変わらず人懐っこい。
毛並みはぬいぐるみみたいにふわふわで、きっと沢山ある家を転々としながら頭を撫でてもらってるのだろう。
――『世那は自分のことを話さない人だったから詳しいことは知らない。分かるのは家族のことで悩んでいて、ずっと友達の家を転々としながら生活してたってことだけ』
……いま少し過去の詩月と重なっちゃった。
「つーかなんで正座?足崩していいよ」
「……いや、広すぎて逆に足を伸ばせないというか……」
「あーまあ、たしかに広すぎだよな。なのに俺は自分の部屋と台所しか行き来しないっていうね」
詩月がこの家でどんな生活をしているのか私は知らない。友達も家には呼ばないみたいだし、プライベートな部分はお互いにあまり見せないから。
「……部屋どこ?」
「2階の突き当たり」
「ふーん……」
「え、お、おい!」
私は長い廊下を出て上へと続く階段をのぼった。
深い意味はない。ただ詩月の部屋がどんな感じなのか興味が湧いただけ。