ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
ドアを開けると眩しいぐらいの夕焼けが顔に当たった。だけど私の第一声は……。
「なにもないね」
部屋の中は笑っちゃうぐらい殺風景で、ベッドと机とハンガーラックに洋服が数着かけられているだけ。
まるで私の部屋かと思うほど寒々しい空間だった。
「だって趣味とかも分かんないし、読みたい本も聞きたい音楽も昔の自分はどうだったのかって考えるとなにも手が出せなくて」
詩月は困ったように顔を掻いた。
今のままでも十分成り立っている存在なのに、
詩月はやっぱり空白の時間にいた自分を求める。
本当の自分とはなんなのか。
本当の自分はどこにいるのか。
このなにもない部屋で詩月はいくつの孤独を乗り越えたのだろうか。もしかしたらそんな夜を共有していた日もあったんじゃないかって考えた。
なんの共通点もないけれど、私たちは少し似ている。
「ジグソーパズルあげようか。なんかよく分からない外国の街並みのやつ」
この部屋に飾ったらという意味で。
「俺作れねーし」
「いや、もう完成してるよ。夏休みに暇だったから」
「暇だったんじゃねーか」
「あ……」
「あ、じゃねーよ」
あははと詩月が笑う。
本物のきみを私は知らない。でもこの笑顔だけはカメレオンじゃなくて本物であってほしいと願ってみたりして。
いつか私もこんな風に柔らかく笑ってみたい。