ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


次の日。校門でやっていた登校指導を無言でクリアして、昇降口に向かうとなにやら視線を感じた。

私なんて学校では空気みたいなものなのに、みんな私を見ている気がする。

「ねえ、あの噂聞いた?」

コソコソと雑音に混ざって聞こえる声。

まさか力のことがバレたのだろうか……と困惑していると話の中で何度も出てくる人物名。

「昨日詩月と羽柴さんが仲良く廊下を歩いてて、その時『家にくる?』って詩月が言ってたって!」

「しかも体育の時に羽柴さんが倒れてさ。保健室まで抱えて連れていったのが詩月らしいよ」

「ってことは羽柴さんを助けて、家を行き来する関係ってことは……あのふたり付き合ってるの?」

迂闊(うかつ)だった。

目立たないように人の話題にならないようにひっそりと学校生活を送っていたのにそれが一瞬で崩れてしまうなんて。

教室に着くとクラスメイトたちが一斉に私を見た。そしてまた小声で噂話。

すでに登校していた詩月の周りには女子たちが群がっていて、ワイドショー並みに質問攻めにされていた。


「羽柴さんと付き合ってるなんて嘘だよね?」

「家に連れていったって本当?私たちがいくら言っても家だけはムリだって言ってたじゃん!」

「そ、それは……」

カメレオンの鉄壁が消えて困った顔をしている詩月と目が合った。そして私はものすごい速さで顔をそむける。
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