ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


そして週末。昨日遅くまで買い溜めていた文庫本を読んでいたせいか目覚めたのは昼過ぎだった。

気配がないのを確認してリビングに下りたあと、電気ケトルのスイッチを入れる。その間スマホを確認して詩月からメールが届いていた。


【俺も暇だから羽柴に釣られて買ってみた(笑)】

文と一緒に画像が添付されていて、それはまだ開封前のジグソーパズルの箱。私と同じ1000ピースでイルカが泳いでいる海の絵だった。

……初心者が同系色を選ぶなんてバカだなあ。完成までにすごい時間がかかりそう。

【私2週間で終わらせたから頑張って(笑)】

そんなメールを送信しながら沸いたお湯をカップラーメンに注いだ。そして椅子に座るとまたスマホがブーブーッと手の中でバイブした。

さっきまで穏やかな気持ちだったのに画面に表示された名前を見て顔が曇る。

とても長い着信。それは父親からだった。 


……本当になんなんだろう。

身勝手でこっちの都合なんて考えてなくて腹がたつ。

一度芽生えた不の感情はなかなか消えない。そのぐらいあの日々は苦しくて、両親の怒鳴り合う声を聞きながら何度部屋で枕を濡らしたか数えきれない。
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