ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
走って走って走って。
だけどこの胸に刺さってるものはなくならない。
行く当てもなく走り続けて、気づけば私は河川敷にいた。気持ちとは裏腹に水面がダイヤモンドのように輝いていてまた苦しくなる。
やっと足を止めて呼吸を整えている中、ポケットの中でスマホが鳴っていた。
母や父からだったらそのまま川に捨ててやろうか。そんなことを考えながら確認するとそれは詩月からだった。
『もしもし羽柴?ちょっと聞きたいことがあってさ』
耳元で響く能天気な声。
『ジグソーパズルって周りから埋めたほうが効率がいいのかなって思って』
そんなことでいちいち電話してくるなよと呆れながらも、なぜだか私は詩月の声を聞いてホッとしている。
乱れていたものが少しだけ落ち着いて、だけどまだ喋れない。
『……羽柴?』
安心したからだろうか。涙腺がゆるみそうだ。
返事をしない私に詩月は何度も名前を呼んで、
最後にこう聞いた。
『今どこにいんの?』
ゆらゆらと揺れる川を見つめながら、きっと来るだろうと。言えば来てくれるだろうと分かった上で私は『河川敷』と消えそうな声で答えた。