ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
暫くしてタッタッタッと足音が聞こえてきた。
私と同じように息をきらせてその足は背後で止まる。
「……ハア……なんかあった?」
さらさらの髪の毛を乱して、詩月は心配そうに私を見た。
チラッと目線だけを送って。だけど私は膝を抱えて周りに生えている草を無造作にいじる。
「こんなところにひとりで座ってたら変質者に襲われるぞ」
詩月は息を整えて私の隣に座った。きっとすごく慌てて走ってきてくれたんだろう。靴のヒモがほどけたままだ。
そのあと詩月はぽーんっと小石を川に投げた。
でも私はまだ言葉が出ない。来てほしいと願ったのは私なのに……。
「俺は羽柴に全部見せてるのに、羽柴は俺に見せてくれないんだ」
小石を投げながら詩月が言う。ぽちゃんっと小さな水しぶきの音がして私はそれをぼんやりと見つめた。
「……自分のことを話すのは苦手なの」
なにを話せばいいのか、なにを話せば胸のつかえがなくなるのか、それさえも分からない。
「だけど俺に羽柴の思念を読む力はない。こうして触れてもなにも感じない」
詩月が私の右手をぎゅっと握る。
「だから言葉にしてくれなきゃ、分かんない」
それを強く握り返したのは私のほう。
焦って、走ってきてくれて私にもそんな存在がいる。誰も信じられないけれど、詩月のことは信じてもいいんじゃないかって。
惨めで情けない部分も見せても大丈夫なんじゃないかって、そんな風に思えた。