ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「……家族がね、他人よりもずっと遠くに感じるの」
詩月と手が繋がったまま、想いを言葉にした。
「私がこの力を得たのは両親の気持ちを知りたいって気持ちからだった。仲が良くてごく普通の家族だったのにいつの間か壊れはじめて」
「………」
「喧嘩の理由が知りたいってこともそうだけど、本当はなにか修復できるキッカケがあるんじゃないかって……そんな希望を持って力を使ってた時もあった」
だけどダメだった。
知れば知るほどそこには黒いものしかなくて。
私の心を打ち砕くには十分すぎるほどの現実だった。
だから、人の心は嘘ばかりで汚いって今でも思ってる。
「……お母さんが再婚するかもしれないんだ。それも全然聞いてなくて、本当に本当に他人みたい」
「………」
「でも避けてたのは私だし話せない雰囲気を作ってたのも私。それでもさ……やっぱりどうしても許せないって気持ちのほうが勝っちゃう」
私は膝に顔を埋めてうつ向いた。
家を出て家族を捨てた父親も、新しい人と関係を続けている母親もどうでもいいって思ってた。
思ってたのに……言葉にしたら全然どうでもいいと思えてなくて、私の関心の中にちゃんとある。
この力に頼らなくてもちゃんと話してほしかった。
嫌なことも背けたい現実も、ひとりで探るんじゃくてふたりの口から聞きたかっただけだ。
気がつくと詩月が私の頭を撫でていた。それはとても優しくてすごく温かい。
「……慰めてんの?」
「うん。足らない?」
「ううん。……ありがとう」
久しぶりにお礼を言った。なにも考えずに自然と口から溢れ落ちたから自分でもビックリだ。
詩月はニコリと笑って、そのあともずっと私の頭を撫でてくれていた。