ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

それからどのくらい時間が経っただろうか。辺りはすっかり暗くなっていて空には月が浮かんでいた。

「ってか俺、虫刺されヤバいんだけど」

まだ夏の匂いが残る季節。夜の河川敷にはたくさんの夜光虫が飛んでいて、私も刺された箇所を爪でポリポリと掻いた。

「そろそろ家に帰るか。腹も減ったしジグソーパズルやらなきゃいけないし」

詩月がそう言いながら立ち上がる。それを私はじっと見上げたまま体は動かない。

……まだ帰りたくないな。


「うちにくる?」

これはデジャブというやつだろうか。どこかで聞いたことがある台詞。

「……どういう意味で言ってんの?」

「そういう意味」

「だからそれがよく分かんない」

私はため息まじりに重たかった腰を上げた。今日詩月の家に逃げたところでどうせ次の日にはまた同じ問題に悩まなきゃいけなくなる。

「ジグソーパズル手伝ってもらおうと思ったのに」

「自分でやらなきゃ意味ないでしょ」

そんな会話をしていると、頭上でパンッ!と乾いた音がした。それは繰り返し鳴っていて、どうやら川の向こう側で誰かが打ち上げ花火をしているようだ。
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