ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
夏の残りものだろうか。そういえば今年も花火なんて夏らしいことはひとつもしなかったな。
市販の打ち上げ花火でも私の想像以上に綺麗な火花が散って、それは夜空に儚く色を付ける。
「詩月はさ」
言いかけた言葉は他愛ないこと。視線を隣に向けて詩月の顔を見るとなんだか物悲しげな表情をしていた。
私の脳裏に残る思念の中にいた詩月の残像。
……そうか。そういえば〝あれ〟は花火大会に行った帰り道だったっけ。
「……なにか思い出したの?」
恐る恐る尋ねた。
「いや……でもなんか胸が……」
詩月がぎゅっと自分の胸を押さえる。
きっと詩月は思い出せそうで思い出せないそんな狭間をこれからも繰り返して、家族のことや友達のこと。そして自分のことが分からずに生きていくのだろう。
私にできることはたったひとつ。
誰かのためになにかをしてあげたいなんて思ったことはなかった。だけどきみのためだったら……。
詩月のためだったら、なんでもできそうな気がする。
「……詩月、明日暇?」
漆黒の空には花火の煙だけが灰色に残っていた。
「え?ああ、別に暇だけど……」
「場所は分かるんだよね?」
「なんの?」
「おばあちゃんの施設の場所」
それを言うと詩月はすべてを悟ったようにゆっくりと頷いた。