ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
詩月はそこを通りすぎて突き当たりの207号室の部屋の前で足は止まった。そして扉をノックして中に入るとベッドの上で眠る人影。
「ばあちゃん」
詩月が声をかけると、その目は静かに開いた。
部屋は個室になっていて自分で作ったのか職員の人が作ってくれたのか折り鶴や手芸の作品が飾られていた。
「ばあちゃん……」
もう一度詩月が呼び掛けると、その唇がゆっくりと動く。
「あら、もうお昼ご飯の時間ですか?」
部屋の前にはすでに食べ終わった食器が置かれていた。どうやら自分がご飯を食べたことすら忘れてしまったようだ。
「ばあちゃん俺だよ。世那だよ」
「……世那?」
おばあちゃんの口が止まる。
「……どなただったかしら?」
ドクンと詩月の鼓動が聞こえた気がした。その顔があまりに悲しさを表していたから私は慌ててその会話に入り込んだ。
「はじめまして。私は詩月の……いえ、世那くんの同級生で名前は……」
自己紹介をしようとした時、突然おばあちゃんが慌てたように寝ていた体を起こした。
「美恵子……美恵子なのね!」
私ではない名前を言う。
〝美恵子〟それは前に読み取った思念の中にいた女性。そう、おばあちゃんの娘であり詩月のお母さんだ。