ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「美恵子……っ。会いにきてくれたのね。喧嘩したままだったから私……」
おばあちゃんが私の肩を揺らした。
認知症になると娘を幼少期の面影と重ねてしまうことがあるみたいだし、きっとおばあちゃんは私のことを美恵子さんだと勘違いしてるのだろう。
「ば、ばあちゃん」
詩月が止めようとしたのを見て私は「大丈夫」と合図をした。
この人の中に眠るもの。私はそれを探しにきた。
そっとおばあちゃんの体を離して、その手を両手で包むように握った。そしてビリリと痺れたあと、ふわりとまるで宙に浮くような感覚。
――『これ以上うちの家のことをあれこれ言うのなら、お母さんには会いにこないから』
そう言って家を飛び出して行った〝美恵子〟を必死で追いかけた。
『待って!美恵子!話を聞いて!』
呼び止めると険しい顔でくるりと振り向く。
どうしてこんなに溝(みぞ)ができてしまったのだろう。自分も頑なでしつけには厳しく子どもを育てた。それは将来この子が恥をかかないようにするためだった。
だから学歴のいい医者の男性と娘が結婚してくれた時は心の底から嬉しかった。
幸せならそれでいい。なに不自由なく暮らしているのならそれだけでよかった。だけど気がかりなのは〝あの子〟のこと。