ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
お母さんの生前の写真や、その頃の我が家の写真は、お父さんが処分してしまったのか見たことがない。
でも、伝え聞く話や家の趣味で判断する限りでは、
お母さんは可愛らしい人だったのかもしれないと想像している。
お母さんがこの家で過ごしたのはわずか半年ほどだ。
私が幼稚園に上がる前に家が完成し、
幼稚園に上がってしばらくした頃、事故にあい帰らぬ人となった。
その日、私はお隣の鈴木家に預けられていたおかげで、難を逃れたらしい。
もしもその時、お母さんと一緒に出かけて、事故に巻き込まれていれば……なんてことを考えてしまうことはある。
幸せというものがわからず、生きている意味が見出せないんだ。
だから、ときどき。本当にときどきだけど、
お母さんと一緒に死んでも良かったのに、と思ってしまう。