ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
真衣が食事を中断している向かいで私はうどんを食べきり、お出汁の効いた汁も飲み干してしまう。
空になった鉢の底を見て、どうしようか、と迷ったのは一瞬のこと。
私は鉢をお盆に置くと、立ち上がった。
「真衣、先に戻ってるね」
「え、ちょっと茜!」
引き留める声に背を向けて、お盆を持って返却口に向かった。
「……なんか感じ悪っ」
「聞こえるよ、さとちゃん」
さとちゃんというのは佐藤さんのあだ名だ。
私に聞こえるようにわざと言っているのだろうか。
そう勘ぐりたくなる大きな声の佐藤さんに、真衣がこそこそと注意をする。
その会話は全て筒抜けである。