ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

「あーあ、涙が出やすい玉ねぎだったのかな」


崇さんがズボンのポケットから取り出したハンカチで拭いてくれた。


ハンカチを持ち歩いているとは、やはりこの人、ヤンキーではないな。


言動は荒いのに、行動はそこらの女子より細やかだ。


「涙が出やすいものなんてあるんですか」


「いや、わからないが、玉ねぎ1個切るだけで涙が出るときと出ないときがある。鮮度の問題なのかな。スライスくらいなら、さっさとやれば大丈夫なんだがな」


「それって私がモタモタしてるせいってことじゃないですか」


ボロボロと泣けてくる。


泣いていると、悲しいと錯覚するような気持ちになるから不思議だ。

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