ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
「わ、悪い。なんだったら向こうで鼻をかんでこい。残りは切っておくから」
それって練習にならないのでは?
と思ったけども、どうにも止まらないので甘えることにした。
「うう、お願いします」
その場を離れてリビングに行くと、
真衣がにやにやと笑いながら、大げさに驚いたような振りをした。
「茜ってば、アイツに泣かされたの?」
「見てたでしょ」
この顔は絶対にそうだ。
さっきのじゃがいもは見てなかったようだけど、玉ねぎを切るところはここから眺めていたんだろう。
私は真衣をひと睨みすると、キッチンに背を向けて、
音を立てないように気をつけながら鼻をかんだ。
この際、真衣や崇さんの前で恥ずかしいなんて言っていられない。