ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

崇さんは私の横から卵焼き器を覗き込んだ。


タバコの香りにまたドキッとする。


肩が触れそうなほど、いや、それどころか髪の毛まで触れそうなほど近い。


意識が卵から崇さんに持っていかれそうだ。


崇さんって他人との距離感が近い人なのかもしれない。


いちいち気にしていたら心臓が持たないし、意識しないようにしよう。


「うん、卵を手前に寄せて」


「こんなにグチャグチャでいいんですか?」


「1回目は気にしない。こうすると空気が混ざって、ふわふわになる。1回目からきっちりと巻こうとすると、固い卵焼きになるからな」


「はい」

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