ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

私も大好きで、ホール1台で1500円とお手頃価格なのもあり、ときどき買っている。


うちはお父さんと私の二人暮らしで、お母さんは私が4歳の頃に亡くなっている。


お父さんは仕事で家にほとんどいないので、一人でホールケーキを食べるわけだ。


当然、食べきれずに余るので、そのときは冷凍して、何日かに分けて食べていた。


そんな食べ方をしていると森下さんに知られたら、「味が落ちるだろう!」と怒られそうだけど、

私にとって数少ない幸せのひとときだ。


ショーケースの向こうに戻ると、店長の奥さん、葉子(ようこ)さんが事務所から売り場に出てきた。


葉子さんは肩までの黒髪をひっつめてまとめ、

ナチュラルな薄化粧で身だしなみを整えた綺麗な女性だ。


失礼ながら、店長と葉子さんではまるで美女と野獣である。

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