ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
お父さんは何の目的で、買い物をしようと思ったのだろう。
私はバイトを始めたので、
お小遣いはもう必要ないし、服は買おうと思えば自分のバイト代から買える。
こうやって買ってもらう必要はなくなったのだ。
それなのに、どうして。
「このお店の服は気に入らないか」
お父さんは少し悲しそうな顔をすると、服を元の場所に戻して、店を出た。
「ありがとうございました」という店員の声が背中にかかる。
店にいる間、近寄ってこず遠巻きに見ていた店員には、私たちはどういう親子に映ったのだろう。
「次は雑貨屋さんなんてどうだ」
お父さんは雰囲気の良さそうな雑貨屋さんを指差す。
店頭を見た感じでは、ナチュラルでオシャレなインテリア雑貨などが多く、女性客で賑わっている。