ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
どうして、どうして、お父さんが!
「茜、やめるんだ。揺すらない方がいい」
「……え?」
名前を呼ばれて、ようやく気づく。
聞き覚えのある声が、冷静さを少しだけ思い出させてくれる。
信じられない気持ちで振り向くと、
いつの間にか私の横に崇さんが膝をついて、私を真剣な目で見ていた。
両手首を掴む手は崇さんの手だ。
その温もりが、冷え切っていた心を微かではあるが温める。
うまく働かない頭はかろうじて、そこに崇さんがいるということを認識した。