ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
「実は、何を作るか決めてないんだ」
「決めて……ない?」
予想外な言葉に、思わず足を止めた。
崇さんは数歩先で立ち止まってから、振り向いた。
「茜の好きな料理ってなんだ」
「好きな料理って言われても……」
急な話題転換に戸惑いながらも考える。
考えるけど、答えがないことを知っている。
それがもしかしたら人より変わっているかもしれないことも。
今まで、クラス替えなどで話しかけてくれて、しばらく一緒にお昼ご飯を食べた子も何人かいた。
そういうときに、ご飯どきだからと食べ物の話になり、「好きなものは何?」と聞かれて答えたら、
変な目で見られたことがあったんだ。