ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

「実は、何を作るか決めてないんだ」


「決めて……ない?」


予想外な言葉に、思わず足を止めた。


崇さんは数歩先で立ち止まってから、振り向いた。


「茜の好きな料理ってなんだ」


「好きな料理って言われても……」


急な話題転換に戸惑いながらも考える。


考えるけど、答えがないことを知っている。


それがもしかしたら人より変わっているかもしれないことも。


今まで、クラス替えなどで話しかけてくれて、しばらく一緒にお昼ご飯を食べた子も何人かいた。


そういうときに、ご飯どきだからと食べ物の話になり、「好きなものは何?」と聞かれて答えたら、

変な目で見られたことがあったんだ。

< 288 / 445 >

この作品をシェア

pagetop