ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
「店長、困ります」
私はケーキの箱を突き返そうとした。
店長は受け取ってくれない。
「桂木が持って帰らなきゃ、傷んでしまうだけだ。食べられないなら捨ててもいい」
「ずるいです……」
さすがに、店長が作ってくれたものを捨てられるわけがなかった。
美味しいからというのもあるけど、店長が心をこめて作っている姿をバイトの合間に見ているのだ。
これはクリスマスケーキじゃなくて、ただのケーキだ。
そう暗示をかけて、一人でやけ食いでもするか。
私はお礼を言って、店をあとにした。