ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

「私が喜ぶと? 私は……私は……」


無意識に手を強く握りしめる。


自分の爪が食い込む痛みを感じても、冷静になることはできなかった。


「私はこんなことよりも、昨日、傍にいてほしかった! 約束通り、ご飯を食べてほしかった!」


言い切ると同時に、私の頬が熱くなった。


燃えるような衝撃に愕然(がくぜん)とするばかりで、何が起こったのか理解できない。


頬は一瞬の熱さからジンジンとした痛みに変わる。


そこを手で押さえながら、徐々に飲み込んでいく。


私、崇さんに頬をぶたれたんだ。

< 350 / 445 >

この作品をシェア

pagetop