ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

「あああ、痛むだろ。頭は振るな」


崇さんは私の頭に手をあて、動きを止めさせると、じっと頬を見る。


ひどい顔を見られるのが恥ずかしくて、少し俯きながら鼻水を必死にすすった。


「手加減はしたつもりなんだが、赤くなってしまったな。とりあえず、コレで冷やして。ちょっと待ってろ」


崇さんがハンカチで包んだ保冷剤を私に渡して、リビングへ戻ろうとした。


「ティッシュなら持って来たわよ」


今度は真衣の声が後ろからかかり、「はい」とティッシュの箱を差し出された。


「ありが、とう」


受け取ると、遠慮なく鼻をかみ、目も拭いた。


まだ涙は止まっていないけど、さっきよりは落ち着いてきている。

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