ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

「というか、忘れてたんだけど。お父さんを探しにこの辺りまで来たら、思い出したのよね。ずいぶん昔のことなのに、どことなく風景に見覚えがあって」


「そうか……」


お父さんは嬉しそうに笑った。


「母さんが亡くなったとき、父さんはここに泣きに来たんだ」


その言葉に、私はとても驚いた。


「お父さんが……泣きに?」


お父さんの泣いている姿なんて見たことがない。


お父さんでも泣くんだ、というのが率直な感想だ。


「おじいさん、おばあさんになるまで一緒にいると思っていたのに、突然逝ってしまって、ショックで……。でも、茜を前にすると、父さんが頑張って茜を守らなくてはと思い、泣けなかった」


「お父さん……」

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