ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

私はそのとき、お母さんの死を理解していたのかも覚えていない。


ただ、私はお母さんの亡骸のそばで眠っていた、と後から鈴木のおばさんに聞いた。


「で、そんな父さんを見かねたのか、鈴木さんが一日、昼も夜も茜を預かってくれたことがあって。夜に一人でここに来て泣いた。

今ここで、そのことを、母さんのことを思い出していたんだ。子育てって難しいなあって心の中で母さんに話しかけていた。母さんはもうここにはいないのにな……」


何もなく成仏している方がいいに決まっている。


でも、寂しそうに呟くお父さんの声を聞くと、

私はわざと「私たちが心配で、まだそばで見守っているかもよ」と笑った。


そうすることで、少しでも寂しさを払拭したかった。


「それはそれで嬉しいかもな」


「ふふ、ねぇ。お母さんってどんな人だったの?」


私はお父さんに初めて尋ねた。

< 385 / 445 >

この作品をシェア

pagetop