ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
私はそのとき、お母さんの死を理解していたのかも覚えていない。
ただ、私はお母さんの亡骸のそばで眠っていた、と後から鈴木のおばさんに聞いた。
「で、そんな父さんを見かねたのか、鈴木さんが一日、昼も夜も茜を預かってくれたことがあって。夜に一人でここに来て泣いた。
今ここで、そのことを、母さんのことを思い出していたんだ。子育てって難しいなあって心の中で母さんに話しかけていた。母さんはもうここにはいないのにな……」
何もなく成仏している方がいいに決まっている。
でも、寂しそうに呟くお父さんの声を聞くと、
私はわざと「私たちが心配で、まだそばで見守っているかもよ」と笑った。
そうすることで、少しでも寂しさを払拭したかった。
「それはそれで嬉しいかもな」
「ふふ、ねぇ。お母さんってどんな人だったの?」
私はお父さんに初めて尋ねた。