ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
あとは蒸らすだけだ。
大仕事をやりきったような達成感と安堵が胸に広がり、ホッとひと息ついた。
案外、簡単じゃない。
蒸らしを待つ間、ティーポットを眺めていると、すぐそばで声がかかり、顔を上げた。
「大丈夫か」
いつの間にか、少年がダイニングとキッチンの境目に立って、こちらを覗いていた。
「もう少しでできます」
と答えたのに、彼は戻らない。それどころか、眉がググッと寄り――……。
「その紅茶、濃すぎないか?」
「ええっ、そんなことないですよ」
たぶん、と心の中で付け加えながら、茶こしを使ってティーカップに注いでいく。
その水色は、黒かった。