ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
「まあ、そうです」
少年改め紺野崇が眉を寄せて、私の顔をマジマジと見た。
「言いたいことは山ほどできたけど、茜に言っても仕方がないしな……」
「茜じゃなくて桂木さん」
いつまでも茜と呼ぶので、私は訂正を促した。
しかし。
「茜」
「紺野崇、桂木さんって呼んでください」
「それなら茜もフルネームで呼ぶのはやめろ。オレはおまえより年上だぞ」
「えっ」
台を拭く手を止め、私も紺野崇、いや、崇さんの顔を見た。
年上を呼び捨てにするほど図太くないので、さん付けにする。
苗字でないのは、崇さんが名前で呼ぶことをやめないからだ。
「年上? 見えない!」
「見えなくても20歳だ。大人だ」
「えええええっ」
少年ではなく、青年。
しかも、成人した大人?