ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

私は崇さんから目をそらすと、吐き捨てるように言った。


崇さんの息をのむような音が聞こえ、驚かせてしまったのかもしれない。


でも、彼の表情を確かめる勇気はなかった。


「それでは、ありがとうございました。また明後日お願いします」


私は崇さんを見ないようにして頭を下げると、家の中に戻った。


玄関扉を閉め、その扉にもたれかかる。


自分のなんとも言えない気持ちを整理できなくて、胸が苦しい。


やがて、バイクの走り去るエンジン音が聞こえ、私は肩の力を抜いた。


たった2週間の付き合いだ。


友だちになるわけでもないし、次に会うのが気まずいなんて思う必要もないのよ。

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