ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー
仕事内容は把握しているだろうと思い込んで、細かいことは話していなかった。
きちんと伝えておくべきだったようだ。
タッパーの蓋を開けて、中を見る。
おにぎりが3つ、タッパーの端に並べられ、
その横には彩としてグリーンレタスが敷かれ、
レタスの上には焼き魚、唐揚げ、昨夜も食べたきんぴらごぼう、プチトマト、れんこんの炒め物、ちくわの磯部揚げがのっている。
品数が多く凝っていて、日常のお弁当というよりは、運動会など特別なときのお弁当みたいだ。
今井さんには、運動会や遠足のときだけお弁当を作ってもらっていた。
普段のご飯と同じ味のはずなのに、いつもより美味しい気がして好きだ。
それを思い出して、なんだか心がムズムズする。
余計な手間をかけさせて申し訳ない気持ちになると同時に、嬉しくて、どんな顔をしたらいいんだろう。
ここに誰もいなくて良かった。