あんたの代わりは、いないから。
…なんて、うまく誤魔化せるわけもなく。
「……嘘だよ、ごめんね」
あたしは気付いたら、
そんなことを口にしていた。
「……え?」
あたしの言葉は予想外だったのか…
後輩くんは、少し驚いた顔をする。
「…後輩くんは、ものなんかじゃないのにね」
「………」
『みんなのもの』って、嫌な言葉。
まるで人権もない、人形みたい。
__脳裏に蘇る、数年前の記憶。
…あたしは、確かにお父さんの物だった。
あの人の言うとおりに、
どうにでも動く操り人形。
「……なんで」
__不意に後輩くんが呟いて、
あたしは我に返った。
……後輩くんの顔からは、
いつもの笑顔が消えていた。