君が思い出になる前に…
「あのさぁ」
真顔に戻り、絵美に話しかけた。
「なぁに?」
にこやかに尋ねる絵美。
「今日の昼休みにね、加賀に言われたんだ。話したい事があるって」
「そぉ…」
絵美も真顔になった。
「だから、これから行ってくる。なんかかなり思い詰めてたみたいなんだ…」
正直に話した事を絵美は納得してくれるだろうか…。
「いいよ…。あたしに断わらなくっても。祐ちゃんの事、ちゃんと信じてますから」
絵美がニッコリ微笑んでくれた。
「うん」
話して良かった…、かな?良かったんだよな…。


絵美を送り届けると急いで家に戻り、そのまんまの格好で自転車に乗って、紀子の待つ堤防へと向かった。
もう6時を回った頃だろうか。
堤防に着くと、この前と同じ場所に紀子が座っていた。

「遅くなってごめん…、待った?」
自転車のスタンドを立てながら、紀子に言った。
「ん~ん、あたしも今来たところよ」
学校の時よりかは、いくぶん明るい表情だった。
またこの前と同じように、紀子の隣りに並んで座った。
「話しって、なに?」
「お昼休み、凄く楽しそうだったわね…。うらやましい」
紀子も見てたのか…。
教室の前の廊下だもんなぁ。気づいて当たり前か。
「いや、ちょっとね。嬉しい事があったから」
ごまかして言った。「そぉ…。杉下さん、留学するんでしょ?」
「え?なんで知ってんの?」
驚いて聞き直した。「あたしの記憶にあるから…」
あっ、そうか…。知ってて当たり前って事か…。
「でも、やめたよ。とりあえず高校卒業してから、また考えるって」
「そうなの?また歴史、変えたんだ…」ハッ!とした。
そうか!おれの記憶には、中学卒業後の絵美の記憶はなかった。

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